元院長逮捕 元には戻らない 被害100人超、怒り収まらず レーシック手術集団感染
2010年12月7日 提供:毎日新聞社
レーシック手術集団感染:元院長逮捕 元には戻らない 被害100人超、怒り収まらず
「手術は両眼で4分で、痛みもなく、入院の必要性もありません」とホームページで宣伝し、他院の半額以下の約10万円で手術ができると勧誘していた銀座眼科。被害対策弁護団によると、元院長、溝口朝雄容疑者(49)=業務上過失傷害容疑で逮捕=のレーシック手術を受け、感染性角膜炎などを発症した患者は100人を超える。計約1億4800万円の賠償を求めて提訴した被害者たちは今も後遺症に悩み、退職を余儀なくされた人もいる。「謝ってもらってもどうにもならない」。被害者らの怒りは収まらない。【和田武士】
高校教師だった横浜市中区の女性(36)が銀座眼科を訪れたのは08年12月。フロアは来院者であふれ「流れ作業のように診察、手術が進んでいた」。手術は約10分で終わった。
異常を感じたのは約1週間後。白いコピー用紙がまぶしく見え、目の奥がうずいた。「よくあることです」。銀座眼科を再訪すると、溝口容疑者に言われた。角膜炎だった。何度か通院したが症状は一進一退。年明けに大学病院に駆け込んだ。
入院は約2カ月に及んだ。09年3月に職場復帰したが、感染した左目の不正乱視が悪化。細かい字が見づらくなり、仕事に支障が出始めた。北海道への修学旅行を引率した際、看板が見えず「生徒を連れたまま迷ってしまった」。今年3月末で退職し、塾講師に転職した。今もろうそくの火が花火のように映るという。「医師免許を剥奪してほしい」と怒りは収まらない。
千葉市緑区の主婦、野村たきえさん(46)も、08年末に手術を受けた。手術直後は「青空が澄んで見えた」。だが約1週間後に目の痛みを感じた。目が開けられず、小学生の娘に手を引かれるようにして銀座眼科に急いだ。
「炎症を起こしています」。症状がひどかった左目の洗浄をすることになったが、溝口容疑者は麻酔が効いていない右目に、まぶたを開かせる器具を取り付けた。目の周辺の皮膚が裂けると思うほどの痛みに、野村さんは「痛い」と叫んだが、溝口容疑者は「ご容赦ください」とだけ言い、洗浄に取りかかった。「怖くて『違う目です』とは言えなかった」と振り返る。
その後診察した大学病院の医師は症状に驚き、「失明するぞ、これ」と危ぶんだ。現在はほぼ回復したが、野村さんは今も「本当に治ってるのだろうか」と不安になる。
◇価格競争、安全置き去り
平日10万円を下回る低価格を目玉にしていた銀座眼科は、友人や家族を紹介した場合、患者本人に2万~3万円をキャッシュバックするなどの割引制度も導入、芸能人の手術実績も売り物にしていた。だが、複数の専門医からは「顧客獲得のためのコストダウンで、安全対策を置き去りにした事件でイメージダウンが怖い」という声が相次いだ。
神奈川アイクリニック(東京都新宿区)の北沢世志博・診療部長は「滅菌せずに器具を使い回すことは考えられない」と話し、「安く抑えるため、衛生管理のコストも削ってしまったのではないか」と指摘。手術費用には術後の診療費も含まれるのが一般的で、経過観察が不十分だった可能性もあるという。
日本眼科学会の常務理事で筑波大大学院の大鹿哲郎教授(眼科)も「レーザー機器だけでも数千万円する。10万円以下はあり得ない価格。患者を多く呼び込まないと成り立たなかったのではないか」と話す。レーシック手術は自費負担のため、低価格を掲げて検査日にそのまま手術を行う医院もあるという。大鹿教授は「手術を受ける場合はリスクなどの説明を受け、術後のフォローも確認してほしい」と話している。【内橋寿明】
◇被害者の会「ほっとした」
溝口容疑者の逮捕を受け、「銀座眼科被害者の会」(81人)は7日、被害対策弁護団(団長・石川順子弁護士)を通じて「一歩前に進み、ほっとした思い。自分のしたことを反省し、真実を包み隠さず話してほしい」との声明を出した。
下記、もっともな判決だと思います。当院では、症例ごとではなく一眼ごとに器具を交換しています。
元院長に二審も実刑 レーシック手術で角膜炎
共同通信社 3月9日(金) 配信 0件
近視矯正のレーシック手術で衛生管理を怠り、患者7人に角膜炎を発症させたとして、業務上過失傷害罪に問われた銀座眼科(東京、閉鎖)元院長の医師溝口朝雄(みぞぐち・ともお)被告(50)の控訴審判決で、東京高裁は9日、禁錮2年とした一審東京地裁判決を支持、被告側の控訴を棄却した。
被告側は「一審の量刑は重すぎて不当」などと主張したが、小川正持(おがわ・しょうじ)裁判長は「経費を惜しんで医療器具を使い回すなど医師としてあるまじき診療態度で酌量の余地は全くない」として退けた。
判決によると、溝口被告は2008年9月~09年1月、20~50代の男女7人を手術した際、電動メスの刃を手術ごとに交換しないなど感染を防ぐ措置を怠り、細菌性角膜炎を発症させた。
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